Eespirare

こんな処まで来て見下ろすその先は
足が竦むでしょうに綺麗なのでしょうか

幸せそうに笑窪作るお前の顔を見て
触れも掴めもしない空しさを感じて

ひらりと飛んでく薄紅 貼りつく
その頬たしかに雫で濡れたままだと

それでも私が差し出すものなどないけど
言葉を与えるくらいならば と

彼の腕を忘れるつもりか
逃げようとそこから飛ぶのか
明日があるのはここに立つもの
知っているだろう
雑音で聞こえてないのか
だから飛ぼうとそこに立って
生きてることが過ちだと
投げ出すことなんて許されないと知って
同じように人を傷つけるのか


聞いて貰えるならば幾らでも囁きましょう
ほんの少しだけその耳を貸してほしい

私も所詮は人の世はみ出す
なんとも言えない 所謂は作りもので
呼吸も涙も要らないものだが
それでも死だけは また別の次元なんだ


ただ彼のことだけを思って
飛んでしまうというのならば
なぜ貴女は雑音風情の思うがまま
誰一人 報われぬことを
彼の意思を踏み荒らすことを
望み旅立つ覚悟なら
叫び 怯ませて睨みつければいい
生きて何が悪いのか問い生きればいい

でも取り戻せない 死は二つない

ひらり舞うは薄紅でなく
細い線のやつれた身体
呟く有難う これでもう悔いはない と
繋ぎとめたはずの鎖は思うより錆びていたらしく
届きもせん彼の最後と
似て非なるものなんて知る由もなく
底はただの土が待つだけ 誰もいない


こんな処まで来て見下ろすしかできず
これが生前聞いた どうにもならぬこと



2011.11.02
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