フロックがとけてゆく

過剰なまでのレースも呆れるほどのリボンも途方もない布量も
不釣り合いじゃない

寄せすぎたギャザーみたいにお前は年老いていくんだ
誤魔化せない首元 手指 髪 忌々しいけどしょうがねぇよ
今がイチバン若いぜ まだ時間と動ける証拠
皮膚の落ちる速度も変わる
老いはいいな

ガチャついて ぶつかり合う
狭い歩道を歩くには不向きだし
モブが笑う モブは見下す モブの向けたカメラにカメラ向け睨む

直線でたつ端をたてまつる
離れ離れが仮縫いで出会う
続きを作る指に突き刺した針が止める 垂れた血が滲む

すべてが終われば消えてなくなるか? どうなるか知った事か
たたいたそばからいつも瓦解するものだ

幾重にも重ねた張り合いの布 意地で広げた全円を翻す
息が詰まる意趣が返される
好きを好きで居続けるほど遠のく

締め上げてく税に溺れて窮屈なドレスと霞んでいく
愛らしくも優雅を求められる 方言まで布の奴隷だ
お前は常に属せない 故に好きを分かち合えもしない
同じ布を纏ったモブを眺め吐き出した

あといくつ好きなものを あといくつ好きなことを
あといくつ手放したら 嫌いになれたなら手にできるんだろうか

塗り重ねた爪の先から俺も剥がれ落ちていきたいんだ
誤魔化せない 見たまま 俺は未だ忌々しいほど変化ないぜ
今も昔も大差ない 俺の時間が止まった証拠
見る夢の内容も枯渇気味だ

幾度も代わり映えない茶会を催しても ぽければいいんだ って
ぽさ を飾り立てたいわけでもないお前にとっては用がない
布 音 俺 どれも揺るがない 揺るがないからこそ譲れない
譲れない中から手放せば何か手にできる糸 が裾を飛び出しても
それを掴むのはやめたほうがいい
縫い合わせて出会えたはずだった なんて脆く終わることもある



2023.01.17

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